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週に1本は劇場で映画を観る!が合言葉。 主に映画、時々小説の感想を脳内垂れ流しで書きなぐるブログ。ネタバレあり。
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IN 
2011年07月18日 (月) | EDIT |
ININ
著  者: 桐野夏生
出版年: 2009年
出版社: 集英社
公式サイト

女流作家の鈴木タマキは、不倫をした主人公と妻の壮絶な愛憎の日々を描いた、緑川未来男の小説「無垢人」に出てくる、愛人“○子”を主人公とし、恋愛における抹殺をテーマにした「淫lという小説を書こうとしていた。「無垢人」は実際の未来男と妻千代子をモデルにしたと言われていたが、愛人○子が誰であったか、未来男も文壇の誰も口にせず謎のままとされており、タマキは○子を特定し、自分が緑川家の平和を壊す単なる記号として描かれたことをどう思っているのか、是非インタビューしたいと考えていた。その傍ら、タマキは1年半前に別れた彼女の愛人、元担当編集者の阿部青司との激動の日々を思い起こし、自分たちの恋愛の涯てを見極めたいという思いに捕らわれていた―――――


「OUT」は面白かった。そのサイドストーリー的なものかと思って、図書館で見かけたので借りてみました。
思っていたのと全然違った。「OUT」に対する「IN」という意味はもちろんあるんだろうけど。
恋愛小説と言えば恋愛小説かな。…というか恋愛小説ですね。章がすべて“IN”という音で韻を踏んでいます(「無垢人」の章以外)

不勉強で知りませんでしたが、「無垢人」は、作家島尾敏雄が、妻ミホとの間の出来事を描いた「死の棘」がモデルになっているらしい。「死の棘」は映画化もされているんだって。

○子が誰か?を追うというミステリ仕立ての構成はいいんだけど、全体としてはあんまり面白くなかった。不倫というものは公にするもんじゃなかろうと思っているので、お互いの配偶者はもちろん、2人に係わる文壇の関係者皆知っていたという、タマキと青司の恋愛にはどうも共感できないというか…馬鹿が2人いるようにしか思えないというか…。
“恋愛における抹殺”をテーマにしているんだけど、終わった恋愛は終わった恋愛で、良くも悪くも思い出にしかならないし、この恋愛がどこに行ってしまったのかとか、個人的にはそんなこと考えたことないからなあ…。男は“別名で保存”、女は“上書き保存”なんて言うけれど、タマキと青司は、タマキが“別名で保存”、青司が“上書き保存”したみたい。

○子の正体もちょっと拍子抜けかな。○子がわかるまでの過程を楽しむものだろうと思うのでこれはこれでいいんだけど、○子のことがあんまり描かれていないので、本当に三浦由美が○子なのかなあ?と思ってしまうわ。千代子が強烈過ぎるので、正直、○子が誰でもいいんだけどね(笑)

三浦由美よりは、「陰」の章の石川茂斗子のインタビューの方が面白かった。10歳の少女の頃に、妻子持ちの32歳の小説家と出会い、最初は無邪気に懐いていたものの、そのうち淫靡な“ゲーム”に夢中になり、大人の女になりきる前、本当のセックスに至らずに男は去ってゆく。その後誰とも付き合わず結婚せず60歳を超すという茂斗子は、ある意味未来男に人生を狂わされたとも言える程なのに、小説には全く描いてもらえない。

ググってもちゃんとは出てこないんだけど、amazonのレビューで「桐野夏生は自身の不倫体験を、主役である鈴木タマキと阿部青司との恋愛として描いている」というものがありました。これが本当かどうかはわからないけど、もし本当だとしたなら勇気がありますね。不貞を働いていたことを公にしているのだから。もちろん、作家が文章として昇華させるという行為自体は、理解できるものではあるけど。

評価:★★(2.0)
わたしにはあんまり面白くはなかった。一部、「陰」の章のように面白いところもあったんだけど…


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THEMA:読書日記
GENRE:小説・文学
TAG:桐野夏生 
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